すでに発売から30年を経ているのだが、未だに古さを感じさせないアルバムだ。R'&Bからジャズに至る要素をすべて包含していて、しかも色香が漂うギタープレイである。
デヴィッド・T・ウオーカーの文字通り最高傑作と言える。
彼自身は吉田美和(ドリカム)のソロ活動の際、そのギタリストとして参加してもいるし、クルセダースの有力ギタリスト候補としても取り上げられた(結局ラリー・カールトンになったのだが)。
いわゆるフュージョン系のサウンドだが、根っからのジャズ系の人達によるフュージョンとは違い、R&Bの色香が強く漂う。このあたりはコーネル・デュプリーと共通するのだが、コーネルの鋭角なギターとは対象的に、デヴィッドの演奏はメロウである。
コーネル・デュプリーの演奏がクラレンス・ゲイトマウス・ブラウンのような鋭角な突き刺す鋭さを内包するスタイルを手本としているのとは対照的に、デヴィッド・T・ウオーカーの醸し出す音の姿はセクシーだ。
ギター演奏の技術は確かだが、単にテクニックという点、指の早さという点では、実は彼以上のギタリストは多分山のようにいる。でも、微妙なタイミングや音色などに、確固たる彼自身が見えるのが素晴らしい。
とにかく30年も前に、これほどの完成度が高く、しかも「ほら俺上手いでしょ」というような押しつけがましさがないアルバムは希有であり、フュージョン系のギター音楽としては、コーネル・デュプリーの「ティージン」と双璧となる。正直言えば、私個人はコーネルとデヴィッドを聞いた後だと、ラリー・カールトンもリー・リトナーも聞く気すらしないのだ。
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